京都のリーマンメモリーズ

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【書評】アメリカはなぜ日本より豊かなのか 野口悠紀雄 幻冬舎新書

今週のお題「好きな小説」

好きな小説は、経済に関する小説です。最近、とても有名になったのでおなじみだと思いますが、特に面白いのは半沢直樹シリーズですね。銀行を舞台にした勧善懲悪的なストーリーに、胸がスッとした人も多かったのでないでしょうか?経済は、私たちの生活に結び付いたものですので、もっと身近に感じるべきだと思います。今回は、皆さんが薄々感じている、アメリカがなぜ日本よりも豊なのか、その理由を教えてくれるというすんごい本を紹介します。(笑)

【1.本書の紹介】

最近は、物価高ですね。
 
よくよく考えると、経済成長というのは、物価が上がっていくものですから、物価高自体はそんなに悪くないはずです。
 
問題は、物価高に見合った収入が上がらないことですね。
 
これまでの失われた30年と言われる間、物価がほとんど変わっていませんでした。
 
大卒初任給も、つい1、2年前まで、30年前とほとんど変わっていませんでした。
 
ところが最近、収入増よりも物価高が先行しているため、困っている人の方が圧倒的に多いと思います。
 
さて、この現象はどうして起こったのでしょうか?
 
どうすれば、この貧困感から脱出することができるのでしょうか?
 

【2.本書のポイント】

アメリカの豊かさの源泉は、異質なものへの寛容と多様性の容認。
 
賃金が経済を牽引するのではない。経済を牽引するのは、新しい技術やビジネスモデルだ。それらが新しいタイプの企業活動を実現し、経済が成長する。その結果として賃金が上がるのだ。
 
日本では、大学や大学院レベルでの教育の水準が低く、十分な専門的教育を行っていない。このため、人材の質が低下している。また、企業も伝統的な分野での伝統的な経済活動を続けており、新しい付加価値の高い経済活動に進出していない。このために、賃金が上昇しないのだ。
 
日本の大学教育が立ち遅れる理由は、日本企業が新入社員に対して、専門的な知識を要求していないことにあると考えられる。
 
日本の半導体産業を衰退させたのは、材料メーカーと異なり、自社製品の事しか考えない大企業体質なのである。
 
日本はデジタル化を進めなければ、世界からますます遅れる。しかし、進めれば、国際収支の赤字が増える。
 
株価が上がっているのは、日本が豊かになっていることを意味するのではない。所得分配が不平等になっていることを意味するのだ。
 
日本でのビッグマックの価格は450円。アメリカでは5.69ドル。これらを等しくする為替レートは、1ドル=79.09円。
 
IMFの購買力平価は、現在では1ドル=90円程度だ。
 
IMFによる2024年の推計値では、購買力陛下が1ドル= 91.378円であるのに対して、市場レートは148円だ。市場レートと購買力平価がこれほど乖離したのは、1980年代前半以来のことだ。この意味で、現時点での円安は、「歴史的」なのである。
 
2022年から急激な円安が進んだ。アメリカ金利を引き上げ、日本は引き上げなかったためだ。日本人は大幅に貧しくなった。「円安の是非」などを問題にするのは、おかしい。
 
外国で発生したインフレが日本経済に持ち込まれ、それに追いつくために賃金が上昇した。しかし、十分な上昇率でなかったので、実質賃金が低下した。
 
実質賃金を維持するために、短期的な経済政策として実行すべき事は、物価上昇を食い止めることだ。現在の日本での物価上昇は、基本的に円安による。したがって、為替レートを円高に導くことが必要だ。
 
低金利がもたらした最も重要な結果は、収益率の低い対象への投資が増加し、その結果、企業の生産性が低下したことだった。アメリカでは、IT産業を中心として、収益率が著しく高い投資が行われ、生産性が向上した。これが金利水準が高いことと対応している。
 
企業の生産性が上昇しても、見えにくいために、人々に評価されない。こうした非対称性があるため、金利の正常化は、政治的に難しい問題だ。日銀が長期金利の制限を廃止できなかったのは、この問題があるからだ。
 
アメリカはIT革命によって製造業中心の経済構造から高度サービス産業を中心にする経済構造への転換に成功し、新しい経済発展のパターンを実現していった。それに対して日本は、古い産業構造を残す選択をしたのだ。
 
為替レートのコントロールこそ、現在の日本で最も重要な経済政策だ。
 
円安は、これまで日本企業の生産性を低めるように働いてきたと考えられる。円安は長期的な視点観点からすれば、日本企業にとって決して望ましいことではなかったのだ。
 
実質経済成長率が0.65%、消費者物価、上昇率2%、長期金利0%と言うのは、整合性の取れない経済の姿であり、ありえない経済だ。
 
アメリカ人が優秀と言うよりは、アメリカは優秀な人々が能力を発揮できる機会を与えてきた。そこにアメリカの強さがある。
 
日本の企業は、1社で全てを完結させようとする自己完結的でクローズな仕組みになっている。だから、中国の工業化と言う大きな変化に対応できなかったのは、必然だったと言える。
 
問題は外国人や外国生まれを排除すると言う日本人の仲間意識と閉鎖性だ。日本が現在の閉塞状態から脱却するために、最も必要なのは、こうした仲間意識を捨て去ることだ。
 
移民が労働力を増やし、経済に望ましい結果を与えていると言うことも、アメリカでは現実に生じているのである。
 
日本の将来を考えると、労働力不足問題は、ますます深刻化する。特に介護においてそうだ。移民政策の見直しは、焦眉の課題だ。
 
序 章 教え子、日銀総裁への公開書簡
第1章 経済学200年の常識を無視する国
第2章 日銀と財務省のための経済政策
第3章 天才経済学者たちが語る日本経済
第4章 それでも経済学は日本を救う
第5章 2012年2月14日の衝撃
第6章 増税前に絶対必要な政策
第7章 「官報複合体」の罠
終 章 日本はいますぐ復活する

【3.本書の感想】

日本が、知らない間に貧しくなった理由がわかりました。

 

私も長期ローンを抱える身ですので、金利が低いというのはとても居心地の良い状態でした。

 

しかし、そのおかげで収入が増えないという事であれば、考えを改めなければなりません。

 

月々のローンの支払いが増える以上に、収入が大幅に増える。

 

これなら文句ないでしょう。

 

金利を抑えると、ローンを抱える国民、設備投資をしたい企業から喜ばれる。

 

円安にすると、輸出企業から喜ばれる。

 

政府が、これを必要以上にやってしまった結果、日本は大変な状態になりました。

 

これからは、適正な金利のもと、収入増を当たり前とした意識で考えていく必要があると思いました。

 

まずは、金利の上昇と円高は善、という視点で見守っていきましょう!

 

どうして日本はこんなになってしまったのかを知りたい方、アメリカの強さの原因を知りたい方は是非、読んでみてください!

 

 

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最後までのお付き合いありがとうございました!