京都のリーマンメモリーズ

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【書評】現代アート、超入門! 藤田令伊 集英社新書

この前読んだ本は、これです。
現代アートって、何をどう見たらよいのかわかりませんね。
学校の美術で教えてもらったのは、いかに上手に描くかという事だったと思います。しかし、現代の美術、アートは進化しています。その流れをやさしく教えてくれるというすんごい本を紹介します。(笑)
 

【1.本書の紹介】

アート展に見に行っても何をどう見たら良いのかわからなかった経験はないでしょうか?
 
そう感じても、それはごもっともです。
 
なぜならば、私たちは学校で、いかに写実的に描くかという事をひたすら学んできたからです。
 
現代のアートと言われるものは、必ずしも写実的である必要はありません。
 
逆に、何これ?というものが高価で売買されていることがあります。
 
もう、理解不能です。
 
さて、私たちが現代アートを見るには、どの様に感じればいいのでしょうか?

【2.本書のポイント】

現代アートは、「20世紀以降に生まれた、技術と都市に関係の深いアート」と、まずはザックリと、そんなふうに理解しておけば良いかと思う。
 
マティスは妻の肖像を描くと言うよりは、妻を一応題材としながらも、絵画と言う表現世界そのものを描こうとしたのである。これは、長年、現実を写し取ることを最大の目的としてきた絵画が、現実との決別を告げたことを意味する。
 
現代アートは、美しさとはまた別の観点から見ると良い場合がある。
 
具体的に何が描いてあるかがわかる絵は、実は絵画の真の美を邪魔しているのではないのか、とカンディスキーは考え進んだ。とすると、本当の絵画の美を表現するためには、描かれた対象がわかる絵柄を描いてはならない、すなわち、具象画を超えねばならないこととなる。
 
作品にまつわる知識があるかないか、また、知識の量はどれくらいかによって鑑賞の中身が変わってくる場合が、現代アートでは事実としてある。
 
中世イタリアの主人であり、学者でもあったペトラルカは、人々を惹きつける魅力の本質は、まさに「何とも言えないもの」だと言い、やはり感性によって感知されると述べている。
 
私が提案する1つのアプローチは、作家や作品について、特別な知識がない場合、訳はわからずとも何やら引っかかると言う「引力」が感じられる作品を集中して見ていくと言う鑑賞法である。
 
現代アートでは、具体的に描かれた対象そのものではなく、その後ろに潜んでいる、目に見えないものー観念、概念、思考、世界観、疑念、ムード、感覚、感情、心理、心情、心象、印象、予感、それとなく感じられる気配といったものが、真の主題となる場合がある。
 
モンドリアンはひたすら、世界を律する法則性や関係性を追求しているのであり、むしろ余計な主観は抹殺して、自分が存在しようがしまいが変わることない。永遠の原理、普遍の法則を明らかにしようとしている。
 
現代アートには、作者の主観を表現しないものがある。
 
新造形主義は、垂直線と水平線によって図柄をデッサンし、線によって形作られる形を赤、青、黄色木の3色を基本に、白、黒及び灰色を補助的に使用して着色すると言う厳格なルールを作り、合理性の高い、秩序と調和のとれた表現を目指した。
 
現代アートは、知識や意味にこだわらず、もっぱら完成で見られることがある。であれば、私たちは意味が「わからなく」でも、なんら、問題ない。自己を卑下したり、途方に暮れたりする必要はごうもないことになる。
 
抽象表現主義の作品には、5メートルを越すような巨大なものがゴロゴロしている。いかにもアメリカ的なスケールで、これらの作品を前にすると、もはや絵を見ていると言うよりは、絵に包み込まれるような感覚を覚える。
 
ウォーホルは、ありとあらゆる「アート」とされるものに「アートではないもの」の可能性を忍び込ませ、「アートではないもの」とされるものに「アート」の可能性を開いてしまった。つまり、これは、「アート」と言う概念自体が根底から揺さぶられていることに他ならない。
 
現代アートは、未知覚だった物事に対する「気づき」を私たちに与えてくれることがある。
 
今やどんなものでもアートになり得るのであって、そうなると、「何か」ではなく「いつか?」と言う時間の問題に過ぎない
 
どういう作品をアートとして許容し、どういう作品をアートからは逸脱しているとするかは、ひとえにあなたの判断にかかっている。
 
今日のアートシーンは、過去に例を見ない超多様化とマージナル化を見せているのは間違いない。もはや倣わねばならない規範はないし、選択肢が少数に限られると言うこともない。
 
小難しい理屈や難解な専門用語はさておいても気軽にアートと向き合える好機が到来しているような気がするのである。
 
【目次】
まえがき
第1章 伝統と違うから興味ない?
第2章 美しいとは思えないのだけれど?
第3章 何が描いてあるのかわからない
第4章 上手だと思えないのだけれど?
第5章 これがアートといえるの?
第6章 そんなに値打ちのあるものなの?
第7章 わかったような、わからないような
第8章 何なのか、意味がわからない
第9章 アートとアートでないものの違いって?
第10章 許せる? 許せない?
第11章 きれいなのに汚い?
第12章 名作はあなたが見つけるもの!
あとがき

【3.本書の感想】

現代アートをたまたま見る機会に出会っても、理解ができない事が多いです。

 

その理由は、この本でよくわかりました。

 

私たちが私たちがかつて学習した、写実的な絵画はもう一昔のもので、今は、コンセプトで見せる芸術が増えています。

 

そのことは理解しておく必要があるようです。

 

アーティストからすれば、必ずしも正確な理解を求めるものばかりではないようです。

 

アートは、感性で感知することが大切だと著者は言います。

 

それでいいのかもしれません。

 

しかし、美術館にせっかく見に来たのだから、せっかくお金を払ったのだから、何か納得して帰りたいというのは、私だけでしょうか?

 

やっぱり、解説して欲しいですね。(笑)

 

この本は、現代アートについて知っておくべき歴史を、学校では教えてもらえなかった、ある種現代アートの常識を教えてくれます。

 

この本を読むと、現代アートがわからなくてもそれはそれでいいということがわかります。

 

現代アートを見に行きたくなりました。

 

アートが何を表現しているのかでいつもモンモンとしている方は是非、読んでみてください!

 

【4.関連書籍の紹介】

大人でも十分楽しめる内容です。

www.fukuikeita21.com

アート思考についてわかりやすく書かれています。

www.fukuikeita21.com

ビジネスにおいてどうして美意識が大切なのか、理由がわかります。

www.fukuikeita21.com

 

最後までのお付き合いありがとうございました!